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優駿となでしこ [2008/08]

2008年8月23日土曜日。

友人が、本と映画について書き込む共有ブログを立ち上げたことをきっかけに、
久しぶりに何度目かの『優駿』を読んでいる。
雑誌のほうではない、宮本輝の小説のほう。

yushun.jpg

その最中に北京オリンピックの女子サッカーで、
日本代表<なでしこ>が準決勝に負け、3位決定戦で負けた。
このチームは前から好きだったんだけど、
この二つの負け試合を見て大好きになった。

なでしこのサッカーは、
ツータッチを基本にした早いボール回しのサッカーで、
それはそれで面白くて魅力はあるんだけど、
今回のオリンピックの試合、特に負けた二試合は
一人ひとりの個性が丸出しになっていてドキドキした。

走力ではなくセンスで勝負する沢、その気持ちが丸見えになってる顔。
GK福元のキックを敵より先に触ることで、弱気を封じようとする永里。
フリーキックを蹴る前、頭の中に描いた弾道を信じようと笑みを見せる宮間。
スピードの少なさから相手に狙われ、その弱さに挑むようにサイドアタックする矢野。

他の選手も個性が光っていて、まるで『ドカベン』を読むように見ていたのだが、
特に好きだったのは阪口の終盤のドリブル。
もうほぼ負けが決定している中で、相手のボールを奪い、上がる。
パスコースを探して胸をまっすぐに立てる。
その胸の奥にある「負けている、負けそうだ」という状況を超えてやろうという気持ち、
大げさに言えば、
サッカーという競技をしている自分自身への愛情を強く感じた。

今回、なでしこはメダルを取れなかったけれど、
そんなことはどうでもよかった。
つーか、むしろ取れなくてよかった。
物語を適当なところで終わらせてほしくないから。
もちろん、闘っているなでしこたちは悔しいだろうけど。

『優駿』は、オラシオンという馬を中心にして、
その一頭の馬が生まれてからダービーに出走するまでの期間に
かかわった人間たちの戦いを描いた物語だが、
そのかかわる人間たちの弱さと強さがたまらなく愛おしくて、
何度も読んでは何度も泣いて、
そのたび北海道の牧場へ行きたくなっている。

最後にオラシオンはダービーに勝つんだっけ?
あれ、よく覚えてないや、
だって、そんなことはどうでもいいんだもん、と思って読んでいる。

この夏、俺には終わらない物語が一つ増えたのだ。

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