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『ガキの使いやあらへんで』 [2010/10]

長男の幼稚園で、以前から使われている言葉がある。
branko.jpg
一番船長!
二番船長!
三番船長!

同じクラスの年長三人組の間で使われてる。
うちの長男は三番船長。
以前は二番船長だったが、今年の春あたりに降格したらしい。

冒険ごっこなどをする時に、
一番、二番、三番の順番で並んで歩いたり走ったりするのが
ま、始まりなのだが、
今は別の使われ方もしているらしい。

「一番船長の命令は絶対聞かなくちゃいけなんだよ!」

つまり、人間関係の序列。
軽めなイジメっ子とイジメられっ子の構図みたいな。
強引さと、体力的なものを根拠にできあがってきた感じ。

で、この言葉を、長男は家で弟に対して使い出した。

「一番船長の兄ちゃんの言うことは聞かなくちゃダメ!」

無茶なことを命令された次男が悔し泣きしている。

うーん、どうしようか、ほっとこうかなと思ったが、
長男の卑屈な態度がどうも気になるので、

ウチで“一番船長”とか使って弟に命令するなよ、
そんなふうにイバるのはすげえカッコ悪いよ。

と、長男を叱っていたら、今度は長男が怒り出す。

「じゃ、幼稚園で俺、どうすんの!?」

やりたくないことだったら、
一番船長の命令だろうが誰の命令だろうが
「イヤだ、やらない」と、きちんと断りなさい。
そうじゃなきゃカッコいい男になれないんだ。
わかるか?

「わからない!
 イヤだって言っても、やらなきゃダメだって言われるんだもん!」

無理難題を言われるのは苦しい…
ガマンして従うのはとても悔しい…
でも、友だちと遊ぶのも大好きだし…

いろんな感情が複雑に絡み合って心の中に溜まっていたのだろう。
告白したとたんに、泣き出す長男。
基本的に臆病で人懐こくて、さみしがりやなのだ。

それでも「イヤだ」と断りなさい。
断り続けてもダメな時は、
父ちゃんが“一番船長”に
「無理な命令はするんじゃない、
 そんなことしてるとお前もカッコ悪い男になるぞ」
って教えてやるから。

そう約束して、その夜は寝た。


大人男子による大人男子のためのテレビ番組に
『ガキの使いやあらへんで』というのがある。

同じテリトリーに入るバラエティ番組、
『タモリ倶楽部』が心をだらーっと解放しきっているのに対して、
『ガキの使い』は“抑圧”がテーマにある。

ダウンタウンや芸人たちが無茶なゲームに挑む。
その先には過酷な罰ゲームが待っている。
逃げ出したいけど逃げ出せない。
お互いに負荷をかけ合う。
その姿が、テレビで見ている俺たちにとって、
実はたまらなくうらやましい。

極論を言えば、
男というのは抑圧とかプレッシャーが好きなんだと思う。
それを乗り越えたところに
“自由”が待っている気がして。


翌日、長男が幼稚園から帰ってきてすぐに言った。

「ダメだったよ」

うそ? マジ!?
お前、“一番船長”に言いたいこと言ったのか。

「輪になって遊んでる時に、
 俺が三人の一番前にいたから、
 俺が今度は一番船長になる!
 って言ったんだけど、ダメだって。
 お前は“オバケ船長”だ! だって」

そうか、言えたのか…。

弱虫長男の思いもかけぬ勇気に、
ちょっとぐっと来ているのを隠しながら、
とりあえず言えたのはエラいよ、
と、頭をぐりぐりしてホメながら、
そういう毎日を送っている長男とその仲間たちが
少しうらやましいなと思った。


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