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『スティング』 [2012/05]

「お客様は神様じゃない、
bulldozar.jpg
 お客様は“王様”なんです!」

昔、レストランでバイトをしていた時に
店長がよく言っていた言葉。

もしも“神様”なら、
お店で働いているこちらの事情や気持ちも考えてくれるし、
少々のサービス不足も笑って許してくれる……

だけど、お客は“王様”だから、
ワガママだし、
気まぐれだし、
欲深いし、
何か気に入らないことがあればさっくり首をはねられてしまうので、
みなさん、全力でサービスしてくださいね!
という趣旨の言葉。

深夜、ケーブルテレビで
映画『スティング』を観ながら
この言葉を思い出していた。


『スティング』はホントによくできた映画だと思う。
これぞ娯楽。

観客という“王様”に対して、
おいしそうな食材=友情の詐欺バトルというテーマを提示、
美しい盛り付け=素晴らしい俳優の表情を見せながら
いっしょにハラハラドキドキさせて、
そして、ラストでは
見たことのないお宝料理=どんでん返しを食べさせてくれる。

しかも、
シナリオ=メニュー構成が上手、
わかりやすいが納得感のある伏線を味わうことで
“王様”はもう一度食べたくなるし、
時には、まるで自分が仕込んだ伏線であるかのように
感じたりもする。

うらやましい仕事っぷりである。


ライターの仕事の場合、
すべては読者=“王様”のためにとはいかない。
まあ、俺だけかもしれないが。

特に、インタビューなどの取材記事の場合、
「読者に喜んでもらう」
という気持ちは5割くらいになる。
で、残り5割の内、
3割くらいを取材対象者への配慮やサービスにあてる感じになる。

例えば、読者が喜ぶからって
タレントから聞いた話をなんでも書いてしまうわけにはいかない。
逆に、
タレントの言いたいこと、伝えたいことばかりを載せても
それでは固定ファンだけのものになってしまう。

この塩梅を計るのに、実はかなりの労力を使っている。
ケースバイケースだし。


また、残り2割で
雑誌・編集部にとっての利益を考える必要もある。

例えば、巻頭のインタビューなんかでは、
その号の目玉になるわけで、
この雑誌はこんなことを発信してますよー、
とか、
この雑誌はこんなコンセプトでがんばってますよー、
とか、
雑誌側のメッセージを記事に盛り込む必要がある。

理解のある編集部の場合だったら、
この雑誌にはこんな風な未来を創ってほしい……
という新たなメッセージを、
外部の者として出版社側に提案する気持ちだって実はある。
こっそりとだけど。


ま、こうやって複数の相手を想定して、
満足してもらうように仕事するのは大変なことだけれど、
逆にやりがいもあるし、面白いし、
相手がぐるぐる入れ替わるので、
一生飽きることはない仕事だとも思う。

ただ、『スティング』みたいな、
100%観客のことを思って作られたような傑作を観ると、
ちょっと嫉妬してしまうのだ。

もしかしたら監督と脚本家がぶつかったかもしれない。
ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが
殴り合いをしたかもしれない。

だが、たとえそんなことがあったとしても、
最後は、
“王様”を喜ばすために、
全員で総力をあげて闘い抜いたのだろうなーと感じる。

そういうストーリーでもあるしね。

いつか子供にも観てほしい映画なのだが、
その時には
バイト先で覚えたハンバーグの作り方も
いっしょに教えてやりたいと思う。



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