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『アイリス』 [2013/03]

少し前に、BSで『アイリス』という映画を観た。
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ジュディ・デンチ演ずる、
アイリスという女性作家がいる。

年老いた夫と暮らしながら、
新しい小説に挑んでいる。

そんな中、
記憶障害を感じ始める。

認知症だった。

言葉を愛し、
言葉の力を信じ抜いて生きてきた作家が、
言葉を忘れていく。

そして、
生きる力をも失っていき、
死へと歩んでいく。

この映画は、
その妻の面倒を一生懸命看ながら
死を看取っていく夫の物語だ。


認知症によって、
頭と体が蝕まれていく中、
若き日の二人の物語が
間に挟まれて語られていく。

出会いから結婚へ、
二人の愛が確かなものに変わっていく様子が
果物の皮をむくように描かれていく。

若き日のアイリスを演じていたのは、
ケイト・ウィンスレット。

少し怠惰な感じに太ったカラダと、
その中に詰まった火のような情熱が、
たまらなく愛おしい。

映画を観ていくと、
夫となる男がなぜこの女性を好きになったか、
なぜ必死に介護しようとするのかが、
手に取るように感じられる。


「いちご大福だなー」と思った。

この季節だけ、
年に一回か二回しか食べない和菓子だが、
「素晴らしい存在感だなあ」と
食べると必ず感嘆する。

野暮ったい見かけだが、
噛みついたとたん、
じゅわっといちごの酸味と香りが
餡の甘味と一緒に
口の中に広がっていく。

ショッキングで官能的ではあるが、
飲み込むと心がホッとする。

それがわかっているので、
毎回、
出来るだけ優しく、
でもちょっとだけ痛い感じで噛みついてみるのだ。


いつか俺も
妻の介護をするようになるかもしれない。

できるかどうかの自信もないが、
その時には
いちご大福に頼っている姿が
なんとなく胸に浮かんだ。


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