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南相馬・山元旅行記 その2 [2015/09]

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JR原ノ町駅近くの
ビジネスホテルにチェックイン、
夕飯を食べに外に出る。

路地裏に美味そうな店を見つけた。
のれんをくぐり扉を開ける。
残念ながら満席だそうである。

もう少し探す。
扉を開ける。
やっぱり満席だ。

結局、4軒のお店を訪ねたが、
どこも一杯で入れなかった。

お盆で帰郷した人が集まってんのかなー…。

魚屋さんの前を通ると、
刺し盛りを買いに来ていたお客さんがいた。

家で宴会をする人もいるんだろうな…。


裏通りのほうに行って、
小さな店の扉を開けた。
カウンターと小上がりがあって、
お客さんはいなかった。
カウンターで食事をとっていた奥さんが
急いで食器を片づける。

夫婦でやっているお店らしい。
俺よりちょっと上の年齢かな…
とか、内心思いながら
カウンターに座って
生ビールとおつまみを注文した。

枝豆のガーリック炒めとか
脂の乗ったカレイ焼きを食べながら
マスターと話をした。

「除染に来てんのかい?」

いや、明日、山元に行って馬に会うんですよ。

そう答えたら、
珍しそうな顔をして、

「山元だったら下道で行っても時間は変わらないね」

と教えてくれた。

南相馬野馬追のポスターが貼ってあったので
どんな感じか訊いてみた。

馬や衣装を自分で持っている人もいるけど、
レンタルする人もいるそうだ。
馬と衣装、合わせて50万円くらいとか。

「まあ、野馬追はね、
 見てもそんなに面白いってわけじゃないよ。
 祭りだからね、やる方は面白いんだろうけど。
 俺は一度見に行って、それから行ってない」

少し皮肉っぽい口調のマスター。
でも、ダンディーでなかなかカッコいい。
8年前、南相馬にやってきて、
この店を始めたそうだ。

「まあ、旗を背にして走らせる競馬は
 なかなか迫力あるけどね」

さっき、海のほうへ行ってきたんですけど、
宮城県の石巻や気仙沼に比べて
復興が進んでいない気がしました…と言ったら、

「賠償金があるからねえ…」

と、困ったような笑うような顔をした。

除染もまだ終わってないのだ。

実際、このお店も
除染の仕事で南相馬に来てるお客さんで
普段はいっぱいらしい。
この夜はお盆でガラガラだったけど。

「料理はなんでも500円!」
黒板にそう書いてある。
その字を見ながら思った。
今、この街は景気がいいのだ。

いつか除染が終わって、
防潮堤などの工事も終わった時、
南相馬にはどんな仕事があるんだろう。
若者たちはどうやって暮らすんだろう。
そんな話もしながら飲んだ。
生ビールからレモンサワーへ。

マスターによると、
夕方、海岸沿いで見かけた
チャリンコ高校生が釣っていたのは
スズキらしい。
火力発電所の近くは海があったかいんで
大きい魚が釣れるんだと笑う。

震災の時、
この店にいたマスターは
津波が来ているのを知らなかったとのこと。

警報も連絡も何もなくて、
津波が押し寄せている様子をテレビで見て
初めて津波が来ていることを知って
びっくりしたらしい。

1時間くらい飲んで話をして、
お店を出た。

「南相馬に来たらまた寄ってよ」

そう言って見送られた。
もちろん飲みにに来ますよと思った。


少し歩いて、もう一軒、
かなり懐かしい感じの居酒屋を見つけて入った。
広い座敷に結構お客さんがいた。
ほとんど男性。
しかもみんなよく食べそうな感じ。

「注文は紙に書いてくださいね」

と、お店のお姉さん。
かなり疲れている感じだった。
というか、実際、
料理や飲み物をたくさん運んで
体力が消耗しているのだろう。

でっかいソーセージなどをつまんで、
日本酒を少し飲んで、
ビジネスホテルに戻った。

二軒目の居酒屋、
「名物!」と書いてあったラーメンを
ちょっと食べてみたかった。



翌8月13日。

予定より1時間早く、午前7時に宿を出発。

飲み屋のマスターの進言に従い、
高速道路ではなく、下道を北へ行く。

「一本松行った?
 下道行くなら寄ってくといいよ」

マスターに言われた通り、
一本松を見に行く。

「かしまの一本松」。

津波が樹木をなぎ倒していった中、
生き残った「奇跡の一本松」。
陸前高田の一本松が有名だが、
この南相馬市鹿島区にも立っている。

今にも雨が降り出しそうな曇り空。
どこかからカラスの鳴き声が聞こえる。
スマホで写真を撮って、
一本松にじゃあねと別れを告げる。


南相馬市から相馬市へ入る。

海沿いの小さな砂浜に釣り人がいる。
6本くらいの竿が並んでいる。
一人の釣り人が遠投する。
飛んでいく道糸の先、
なんだか網のようなものがついている。

車を止めて、
砂浜に降りて行って声をかけた。

何を釣っているんですか?

「カニ」

日に焼けた顔のおじさんが蓋をめくって
四角いバケツの中を見せてくれた。
大きなワタリガニが3匹入っている。
そのサイズにビックリした。

「魚よりこっちの方がうまいんだよ」

確かにこれほどでっかいカニなら
相当美味しいだろうなと思った。


しばらく北上していくと、
工事中の防潮堤に「釣師浜漁港→」と書かれた
看板があって、
その脇に狭い入り口があった。
砂利道に入っていくと、
とても整備された漁港があって、
二組の若い「釣師」が車を止めて竿を出していた。

ちょっと様子をうかがったけれど、
何も釣れてはいないようだった。
ポツポツと雨が降り始めた。


海沿いの道から国道6号線を入り、
北へ走っていくと、
10分足らずで宮城県に入り、
山元トレーニングセンターの標識も目に入った。

トレセンの駐車場に車を止める。
調教トラックへと向かう馬たちが
一列に歩いている。

約束の午前9時までまだ30分以上ある。
雨は強くなっている。
濡れて待っていても仕方がないので、
とりあえず、一旦トレセンを出て、
亘理町と山元町を車で走る。

国道沿いでスイカが売られている。
山元町の名産なのだ。
冬にはイチゴも収穫できるらしい。
海岸のほうへ脇道に入ると
イチゴ狩りの看板とハウスが見えた。


そのまま海沿いを走っていたら、
小学校の校舎と体育館が見えた。
真っ平らになった海岸にポツンと建っている。
建物自体はしっかり残っているが、
窓ガラスは全部割れている。
横に慰霊碑らしきもの。

「山元町立中浜小学校」。

横をゆっくりと通る。
津波でどれだけの子供たちが亡くなったのか…
被害を勝手に想像して、黙り込んでしまう。

そのまま
トレセンへの道を進んでいこうとしたが、
山を抜ける道が通行止め。
来た道を戻ることにして、
もう一度、中浜小学校の前を通った。

忘れられない光景だなと思った。


→その3へつづく
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