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映画『セッション』 [2015/12]

映画『セッション』を観た。
kakinotane.jpg
なかなか迫力があって、
引き込まれて面白かったのだが、
観た後、
変なことを思い出した。


25年くらい前。
吉祥寺南口のマクドナルドの2階で、
『宝島』の編集者と待ち合わせしていた。
夜10時半くらいだったか。

ちょっと早めに着いて、
薄いコーヒーを飲みながら
仕事用のノートをながめていたら、
突然、女の人が声をかけてきた。

18歳くらいか、もっと若いか。
太目で、リュックを持っている。

「あのー、すみません」

はい?

「実は私、
 今日泊まるところないんですが…
 今晩泊めていただけませんか」

えっ? うちに?

ビックリしながら答えると、
思いつめたような感じでその女の子は言った。

「もしよければ、お願いします」

俺はアパートに一人暮らしだし、
それは可能だけど……

ドキドキしながら少し考えて、
すまなそうな感じで断った。

ごめん、これから仕事あるし、
ここでその仕事相手と打ち合わせがあるんで、
うちには泊められないです。

「わかりました」

その女の子は、うなづくと、
笑顔を見せるでもなく
階段を下りて店を出て行った。

横目で後ろ姿を見送った。
まだけっこうドキドキしていた。


映画『セッション』は
ニューヨークの有名音楽大学に入学した
19歳のドラマーと、
上級バンドを指揮する鬼のような先生の話。

師弟の物語と言えば、まあそうなのだが、
いわゆる「師弟愛」ものではなく、
自我と自我のぶつかり合いのバトル物語で、
それが『セッション』という
邦題にもつながっている。

主役の二人以外の登場人物として
大学生ドラマーの父親と
同い年くらいの恋人が出てくる。

父親は、
息子に甘いって言えば甘いが、
まあ一般的な父親。
俺も父親なので彼の気持ちはまあわかる。

恋人は、
同じくニューヨークにある
3流大学に入学したばかりの
アリゾナ州出身のキュートなおねえさん。
映画館でバイトをしている。
アゴの形がコンプレックス。

この彼女に対して、主人公は
自分で声をかけてつきあい出しておきながら、
精神的に追い込まれた時、
一流ドラマーになるのに恋人は邪魔だと
一方的かつ身勝手に別れを告げる。

でも、
復活のコンサートに出られると決まった時、
無礼を謝り、
彼女に観に来てくれと電話で頼む。

だが、
彼女はたぶん行かないと答える。
新しく出来た恋人に訊かないとわからない…
と、電話の向こうでつぶやく。

このシーンが俺にはよくわからなかった。

彼女は本当に恋人ができたのか。
あるいは、会いたくなくて、
もう電話をかけてきてほしくなくて、
恋人ができたとウソをついたのか。
それとも、さみしい気持ちを悟られたくなくて
恋人に相談すると出まかせを言ったのか。

なんでもないシーンなのだが気になった。
この映画を観た人たちは
どう解釈するのか聞きたいなと思った。


ささいな出会いでも、
なんでもないような瞬間でも、やっぱり
人生ってのは「セッション」の連続だと思う。

25年前のマクドナルドで、
俺はちょっと怖くて
つい逃げてしまったが、
もしかしたらあれも何かを変えるような
「セッション」だったのかもしれない。

今、あの女の子はなにをしてるんだろうか。
っていうか、
女の子じゃないだろうけど、今はもう。


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