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『キツツキと雨』と『そして父になる』 [2014/10]

映画『キツツキと雨』と
『そして父になる』を録画で観た。
神宮球場の夕焼け.jpg
どっちも面白かった。

『キツツキと雨』は
キコリのおじさんと若い映画監督の話。

『そして父になる』は
父たちと息子たちの話。

すんごく簡単に言ってしまえば、
両作品とも、

自分よりずいぶん年下の
子供たちくらい若い男に
何かを教えようとしたら、
逆に自分にとって大切なモノがなにかを
教えてもらっちゃった!

という話。


長男が学校の国語で
「お仕事リーフレット」
というものを作るとのこと。

なにかひとつ、
なんでもいいので仕事を選んで、
その仕事をしている人に取材して、
話を聞いて、
写真を撮って、
4ページぐらいの仕事紹介小冊子を作る課題だ。

ま、
ライターの俺がやってる仕事を
子供もやるってことですな、
学校の勉強で。

教科書にそういうページがあるので、
公立に通う東京の小学生は
みんな作るんじゃないかなと思う。

自分の父親の仕事や、
町内のお店とかを取材することが多いらしい。

で、
俺がやってる
ライターの仕事をリーフレットにしても
なんかつまんないので、
知り合いの漫画家に
取材対象になってもらった。

長男を連れて
漫画家の仕事場に行った。

漫画家が笑顔で迎えてくれた。

いくつか用意してきた質問をして、
丁寧に答えてもらって、
ボールペンでノートにメモをしていった。

質問が終わった後は、
写真を撮りながら
漫画を作る手順を教えてもらっていた。

もともと
話が大変面白いタイプの漫画家だったこともあって、
とっても面白かったらしい。


子供を遠巻きに見ながら
漫画家の話を聞いていたら、
いろんなことを思い出した。

俺が伝えたいことってのは、

俺が人に何かを伝えるのが好きだ

ってことなんだなって。


人間誰でも当たり前に持ってる欲望なんだけど、
忘れちゃいがちな欲望。

教えてもらいました。

サンキュー!!

『ゼロ・グラヴィティ』 [2014/10]

映画『ゼロ・グラヴィティ』をブルーレイで観た。
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たまたま、
この日は皆既月食の日だったのだが。


映画『ゼロ・グラヴィティ』は
自由になるために
いろんなものを脱いでいく映画だった。

宇宙遊泳しているときの宇宙服。

宇宙ステーション。

帰還するための宇宙船。

そんなものを脱いでいく
遭難科学者のサラ。

絶体絶命の大ピンチから生還しようとする時、
彼女は、
心にまとわりついて手放すことのできなかった
悲しき過去の記憶も
脱ぎ捨てる。

アニメ『アルプスの少女ハイジ』で、
フランクフルトからアルムの山に
やっと帰ってきたハイジが、
おじいさんのいる山小屋へ向かって
高原を駆け上りながら、
フランクフルトで着させられた
お嬢様ドレスを脱いでいくシーンが
なんとなく重なった。


この映画は、
映画を観る観客が持っている
不自由さをなんとか脱がそうとしている
映画でもあった。

ほとんどの観客が
宇宙空間に行ったことなんてない。

無重力状態を体験したことなんてない。

まあるい地球を見たことなんてない。

宇宙服を着たことだってない。

なので、
「所詮、作りもんだよね」
「CG、CG」
「ウソだから、フィクションだから」
「臨場感を感じろって言われてもちょい無理」
「映画なんてそんなもんでしょ」

なーんていうシールドで
心を守っているのが、ま、当たり前。

そのシールドを剥ぎ取るために、
観客に自由を持ってもらうために、
懸命に映画を作っている、
想像力をフルに発揮しているところが
すんばらしいなーと思った。


今年の皆既月食は
ゆっくり長いこと愉しめた。

空に軟式のテニスボールが浮かんでいた。

いつまでたっても
落ちてこないのが不思議だった。



『明日を夢見て』 [2014/10]

『明日を夢見て』という映画を観た。
ディアボロ.jpg
三鷹と吉祥寺のツタヤを回ったのだが、
レンタルしてなくて、
ツタヤディスカスに入会して送ってもらった。

イタリアの映画。
1995年制作。
『ニュー・シネマ・パラダイス』の
トルナトーレ監督の映画。

第二次世界大戦の傷跡が残る
1950年代のシチリア島。
一台のおんぼろトラックがやって来る。

「みなさん、映画に出演してみませんか!
 ローマに行ってみませんか!
 スターになれば億万長者も夢じゃありません!」

そんな呼びかけに貧しい村の人々が
ぞろぞろと集まってくる。

主人公の男は、
集まってきた村の人々から
フィルム&現像代の1500リラを徴収、
彼らの顔を撮影していく。

ローマの“チネチッタ”に送るための
フィルムテストだといって。

1500リラを払った人々は
キャメラの前に立つ。
いつか映画に出ることを夢見て。

『風と共に去りぬ』のセリフを暗唱したり、
自分の過去を話したり、
誰にも言えなかった告白を涙ながらで語ったり。

人間だれでも持っている
それぞれの真実が撮影されていく。

もちろん、
ただの詐欺なのだが。

撮影された人々のフィルムが
映画監督やプロデューサーに届くことなどないし、
現像のためにローマに送られることもないし、
第一、キャメラの中に入っていたフィルムは
もともと使えない古いフィルムだし。

詐欺野郎だった主人公は
報いを受ける。

自分の中に眠る
“隠していた真実”を暴いてくれた
“愛”を失うことによって。


まあ、素晴らしい映画だった。
とんでもない大傑作だった。

で、気になったのが
1500リラ、というお金。

いくらぐらいなのだろう?

修道院に住む
自分の年齢もよくわからない美少女が、
どスケベなおっさんに
全身を見せてもらったお金が1500リラだったか。

それを見ていると、
100円か、
200円か、
500円くらいかもしれないと思う。

で、今の俺で言えば
いくらくらいなのだろうかと考える。

夢を買う値段。

自分にとって一番知りたくないことを
知ってしまうかもしれない価格。

一夜の飲み代くらいか。
映画を観に行く値段くらいか。
競馬の1レースにかける馬券代くらいか。

なんとなく、
2500円か、
それか、
ちょうど1万円な気がする。

ずいぶん、俺も
お金持ちになったもんだなあと思う。



『マザー』 [2014/10]

楳図かずお監督作品、
映画『マザーMother』を新宿ピカデリーで観た。
スペイン村.jpg
朝9時からの回。
観客は自分も入れて5人だった。

映画は面白かった。

楳図かずおファンでなければ、
チケット代の1800円は高いと思うだろう。
500円くらいだったら
「ああ、面白かったねー」
と笑顔で帰ると思う。

楳図かずおファンなら、
1800円はちょうどいいくらい。

楳図監督本人の電話の声が聴けるし、
『おろち』がいちばん好きだというヒロインは
楳図さんの女子部分を代表している感じだし、
ところどころのお茶目な感じも
楳図さんを感じさせてくれて、
楽しくなる。

例えば、
旧家の壁に飾ってある写真。
おじいさんとおばあさん、
おとうさんとおかあさん、
そして、その横に犬。

ギャグなのかもしれないし、
そうでなく
奈良とか和歌山とかでは
犬の写真を飾るのも普通のことかもしれないとも思える。

どこを切っても楳図さん、
そんな映画だった。

楳図かずお役の片岡愛之助は
ちょっと太目すぎるかなあと思ったけど、
他のキャラクターが
だんだん楳図さん自身に感じられてくる。

お母さん役の真行寺君枝も、
蜘蛛を怖がっているのを見ていると、
なんだか楳図さんに似ているように感じる。

この映画の世界では、
キャラクターたち全員が楳図さんなのだ。


今日は吉祥寺でユニクロがオープンした。

その広告には楳図さんが出ていた。

地域密着型のユニクロにするらしい。

どうせなら、
赤と白のボーダーのシャツも売ればいいのにな
と思った。

吉祥寺を歩いている人全員が
楳図かずおスタイル。

赤白のシャツで、
背筋をぴんと伸ばして、
手をしっかり振って、
笑顔で散歩している。

一度、
そんな楳図ワールドに住んでみたいと思った。


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