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『スタンダップ・コメディ・ライジング!!』 [2016/07]

下北沢。
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このまままっすぐ歩いていく行くと、
左にすぐ
バイト仲間が恋の悩みをぶちまけていた
『フライト』があって、

もうちょっと先を左に曲がっていくと、
坂本やマイケルがバイトしていた
『旬亭』があって、

左に曲がらないで行くと、
『ふるさと』と『陣太鼓』が両側にあって、
その先には「バニシン!」こと、
『にしんば』がある。

もう一度この場所に戻って、
ふと右を見ると、
バイト先のマドンナをちょっとを口説いた
『得得ライト』が一階に、

その隣には、
時間をつぶそうと小皿中華で乾杯するうち
老酒にまで突撃して
待ち合わせにすっかり遅れる『新雪園』、

地下には、
鬼太郎の家みたいな場所があった
なんだっけ?
思い出せないや、居酒屋があって、

その上、3階か4階あたりに
ケンゾーとかがギター弾いてたり、
いろんな友達がロックを歌ったりしていた
『下北屋根裏』があった。

そして、
左側を向けば、
ここは『本多劇場』の入り口。


2016年7月2日、午後7時--
本多劇場の階段を登っていって、
日本スタンダップコメディ協会旗揚げ公演、
『スタンダップ・コメディ・ライジング!!』
を観た。


日本スタンダップ・コメディ協会は、
清水宏がいきなり「会長」を名乗り、
相棒のぜんじろうといっしょに立ち上げた
新団体。

その第一回公演。

ゲストに
小堺一機とラサール石井を迎え、
スタンダップコメディ4連発で
大いなる冒険へと船出するぜ!!
という趣向。


幕開け。

会長である清水宏がまずは
前説で場をあたためる。

とうか、
無理くり、客に場をあたためさせる。

そして、ホントの開幕。


一番手は、
ぜんじろう。

つい数日前、
全米コメディ第4位になったのだが、
その成り行きを語りながら、
スタンダップコメディアンとしての実力を見せる。
観客の体験をくすぐるのがうまい。
ちょっとアメリカに行った気分。


二番手は、
ラサール石井。

もしかして、
キンチョーしてたのかもしれない。
おっさんなのに
なにか客をときめかせる初々しさがあって、
こっちもドキドキしながら腹を抱える。


三番手、
小堺一機。

プロフェッショナル。
NHKのカッコつけ当たり番組じゃないが、
ザ・プロフェッショナル!
とっても華やかなのに、驚くほど人懐こい。
スターが踊っているようでもあり、
友達が話しているようでもある。
愉快痛快、気分爽快に拍手を送る。


そして、トリが
“会長”の清水宏。

前の三人とはムードが違う。
普通、観客が求めるだろう
スタンダップコメディの軽妙さとは正反対、
どす黒く、重苦しい、
叫びたいのに叫べない!
いや、でも叫んじゃうかこの際!
つー感じ。

「宿命」と言ったら大げさだろうか。

自分の人生を呪い、
そして、自分の人生を愛し抜き、
自らの「宿命」を
生き切ってやるんだ!
と宣言している
“演劇野郎”かつ
“スタンダップコメディアン”の
激闘物語。

自分史を語っていくうち、
ここはスタンダップコメディの舞台なのか、
“劇団員”にとっての夢の舞台なのか、
わからなくなっていく。

いや、
本人も舞台の上でそう叫んでいたが、
最後にはすっかりもう
“演劇”になっていたと思う。

よく見とけよ、あんたたち!
いや、見とくだけじゃだめだ……
俺の冒険の道連れにするから
覚悟しとけよ、お前ら!
と、観客に向かって吠える清水宏。

それはもちろん
自分自身にも吠えている。

もがいて叫んで、
くじけそうになったりしてまた上を向いて、
で、今ここに立って、
第一歩を踏み出そうとしてるから、
まさに“スタンダップ”コメディ。

旗揚げにふさわしい内容だったと思う。

トークというより独白、
どっちかっていうと“毒白”に、
客は、笑い、
ラストでは涙をにじませていた。

前の三人の舞台を
ちょっと持って行っちゃった感じ。

AKBのことを
「ドロボウ!」と叫んでいたが、
この公演に関して言えば、
清水宏、
お前のほうこそ「ドロボウ」だよ!

と、
心の中で少し笑いながら、
夜の下北沢の街を歩いていた。


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