SSブログ

『オーバー・フェンス』 [2016/10]

少し前から
隣りの小さな公園でバットの素振りをしている。
takebashi.jpg
右50回、左50回。

子供たちに
「なんで素振りしてんのー?」
と訊かれた時は
「大リーガーになるかもしれないからな」
と答え、
仕事仲間とかに
「なんで素振りしてんのー?」
と訊かれた時は
「子供が中学生になって暴れ始めた時に負けないように」
と答えているが、
実は理由なんかない。


映画『オーバー・フェンス』を観た。
テアトル新宿。

主演はオダギリジョー、蒼井優
監督は山下敦弘。

函館。
失業して、
職業訓練校で大工の勉強をしている白岩。
東京のゼネコンに勤めていたが、
とある理由から妻と別れ、
地元の函館に戻って来ている。

職業訓練校の仲間に誘われ、
キャバクラへ。
そこで会ったサトシという名のキャバ嬢に
心惹かれ、
心を見抜かれ、
心の叫びをぶつけられ、
心の壁を越える勇気を得ていく。

キャバクラに誘った仲間を
松田翔太が演じているのだが、
とても臨場感があってよかった。
いるいるって感じ。

白岩が二回目にキャバクラに行った時、
嫉妬というか、
情けない独占欲というか、
小さなプライドというか、
そういうどうしようもない男心から
松田翔太が言わなくてもいいことを言ってしまうのだが、
そのシーンがとてもよかった。

結果として、
主人公・白岩の心の後押しをしてしまうのだが、
こういうこと
あるあるあるあるー
と思いながら、
抱き合うオダギリジョーと蒼井優を見ていた。

ずるずると鼻水と涙を流しながら。

それは、白岩が
初めてフルスイングしようとした瞬間だったから。

フルスイング。

バットにボールが当たる。

飛んでいくボール。

フェンスを越えていくボール。

実際に打つことより、
イメージすることのほうが
実は、尊くて、忘れられない。

もしかしたら俺は
そういう瞬間に出会うために
バットの素振りをしているのかもしれないなー
と思った。

「普通の話だったねえ」

帰り際、
一緒に観ていた女性がそう言っていたが、
その通り。

最高のホメ言葉じゃんと思った。


『ワイルド・フラワーズ』 [2016/10]

映画『ワイルド・フラワーズ』を観た。
ワイルドフラワーズ.jpg

購入したDVDで。
日本映画。

小さな女子プロレス団体の物語。

死んだと思っていた母親が
実は伝説的女子プロレスラーで、
その母親が死んじゃったんで、
息子の若いお医者さんが社長になって
団体を継ぐことになる。

『ガリンペイロ女子プロレス』。

その団体に、同時期、
二人の新人見習い女子プロレスラーが入門。

ひとりは上司のセクハラから逃げ出したOL。
もうひとりは空手使いのヤンキー。

二人ともタイプは違うけどすごく純情。

新米社長と二人の女子プロレスラー、
その「ど素人」の三人が
「プロ」になっていく…という話。


プロレスは格別好きなわけじゃないのだけど、
とても面白かった。

映画の導入は
絵に描いたようなフィクションぽさ、
言わば「漫画のような」タッチで
物語は始まるのだが、
観ているうちに
「本物」のドキュメンタリーなシーンが
映画の中にグイグイ食い込んでくる。

それは
「出来レース」=勝ち負けの決まっているものと
「真剣勝負」=純粋な格闘技が
ぶつかり合っていく感じで、
プロレスの物語というネタと相まって、
観る者をひきつけていく。

で、最後のリングでは、

「フィクションでもドキュメンタリーでも
 どっちでもいいじゃん!
 本気で立ち向かっていれば最高じゃん!
 それこそ人生のプロじゃん!」

という気持ちになって感動する。

ちなみに
死んじゃった母親で
伝説的女子プロレスラーを演じているのは
高畑淳子さん。

女優としてだろうが
母親としてだろうが、
本気で立ち向かっていれば
やっぱ「プロ」じゃん!
カッコいい人生じゃん!
って思った。

それは
この映画の製作者たち自体にも感じた。

低予算だろうが、
単館だろうが、
本気で面白いものを求めていけば
やっぱカッコいいじゃん!
とりあえず立って、
撮っていけばいいじゃん!
って。

あと、キューティー鈴木は
やっぱりキューティーでした。

惚れそう。



この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。