SSブログ

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』 [2012/05]

映画『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』をDVDで観た。
bbqpan.jpg
観ながら、
あだち充の漫画『みゆき』を思い起こしていた。


『みゆき』だけではなく、
あだち充の漫画はだいたい
“家族”を描いていると思っている。

青春ラブコメ……
スポ根胸キュン……

そういう衣装に身を包んでいて、
ま、そっちのほうが読者にとっては
美少女のハートを狙う気持ちで読めてうれしいわけだが、

ストーリーの下敷きには、

「“家族”っていったいなんなんだろう?」

という問いかけが隠してある。

『みゆき』なら、
「血がつながってないとやっぱ家族じゃないの?」

『タッチ』なら、
「兄弟ってのが実は一番の敵なんじゃない?」

『陽あたり良好!』は
「いっしょに住んじゃえば家族同然じゃない?」

『虹色とうがらし』などは、
「ルーツ探しを通して、ホントの家族になろうぜ!」
的な家族育成旅物語である。


ほかの作家の漫画にも
『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』、
『天才バカボン』に『ダメおやじ』、
『ひまわりっ!』に『毎日かあさん』など、
人気家族漫画はもちろんあるのだが……

“家族”というものに対するこだわり、
隠された欲望が眠っているのは、
あだち充作品と
そして、楳図かずお作品だと思っている。


映画『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』の主人公、
ダニエル・プレインヴューは“掘る男”だ

まず、金(きん)を掘る。
手にした342ドルを元手に石油を掘る。

地中に眠る“家族”を探し求めて。

だから、孤児を自分の息子として育てる。
突然現れた腹違いの弟をパートナーにする。

だが、
人間を信じられず、
愛情というものの力を信じ切れない男は、
一度は“家族”だと決めた息子と弟を
最後まで“本物の家族”と信じ抜くことができず、
結局、
自分から切り捨ててしまう。

あまりにも“家族”を渇望しすぎていて。

そして、最後には
自分自身とよく似ている偽預言者--
義理の甥っ子という“家族”になった上に
自分のことを「ブラザー」などと呼ぶ神父--
イーライ・サンデーの
脳天をも掘り起こすのだ。

自分の脳天を掘り起こすように。


なんと切実な欲望だろう。
なんと激しい渇きだろう。


「家族っていったいなんだろう?」

そんなことなどまったく思わずに
日常を送っている俺は
やっぱしあわせなんだろうなーと
のんきに思った。

そんで、
家族という難しいテーマを
のんきな顔を見せながら描き続ける
あだち充という漫画家に対して、
やっぱすげーなーと思うのであった。




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

オークスダービー ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。