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田代島 前編 [2015/04]

猫の島、宮城県の田代島に行った。
tashironeko1.jpg
と言ったら、
猫好きの人たちの反応が次々と返ってきた。

「田代島行ったんだ!
 なんで、どうして、私も行ってみたーい」

的な。

むむ。
有名なんだな、田代島。
その田代島になぜ俺は行ったんだろう?
振り返ってみる。


春休みだ、どっか旅行に行こう!
と思ったところで、まず、
「東北」か「東北じゃない」かの選択がある。
旅行を計画する時、いつものこと。
放射能とかの話じゃなく、
時間的距離的な問題として。

今回は東北に行けそうだ、ってことになって、
じゃ、東北のどこに行こうかと考える。

この前観た映画『くちびるに歌を』を思い出す。
島がいいなと思う。
ガッキーみたいに船に乗っていくのがいいなと思う。
ただ、そうすると少し時間がかかる。
何かと文句を言う生意気次男がうるさいかもしれない。

じゃあ猫だ。
猫の島なら、動物好きの次男はぶつぶつ言わないだろう、
ということで、
どっかで猫の島だと聞き知っていた
田代島を目的地にしてみた。

じゃあ宿だ。
田代島の宿は楽天トラベルとかじゃらんでは
予約できない。

一番ご飯が旨そうな気がする…
そう思って『網元』という民宿に電話した。

4月2日に一泊したいんですけど。
おばあちゃんがちょっと間をあけてから、

「猫見にくるんかい?」

と言ってくれて、
そうですそうですと答えて、予約できた。
よかった。


仙台に前乗り、一泊して、
次男の同じ名前の青葉城跡に登ってから、
石巻にある『網地島ライン』の船乗り場へ。

ここから田代島への船に乗る。

11時52分、出発の8分前、
急ぎ足でチケット売り場に入ったら
『網代島ライン』の人が訊いてきた。

「日帰りかい?」

いいえ、一泊します。

「うーん、明日は船、出ないかもよ」

え?

「出たとしても、朝7時40分の船だけかなあ」

マジですか?

「まあ、朝一番の船も80%出ないと思う」

80%欠航。なんで?

「明日は風強いから」

天気荒れるんだ、今日はこんなに快晴なのに。

「泊まると明日帰ってこれないかも。どうする?」

ちょっと悩む。
もう時間がない。
明後日は? 船出ます?

「あさっては……たぶん大丈夫だな」

その笑顔にプロの自信を感じた。
じゃあ、行きます。
船乗ります! チケット買います!!

チケット購入は自販機。
でも、なかなか千円札が入っていかない。
『網地島ライン』の人が
上手に千円札を入れてくれては
ボタンを押してチケットを買ってくれる。
コツがあるのだ。

足早に船に乗ったら、
船はすぐに港を出た。


船に乗ること約45分……
同じ田代島の大泊港に寄ってから、
仁斗田港に到着。
ちょっとドキドキしながら船を降りる。
降りたのは俺たち家族を含めて7人。
船はこの後、終点の網地島へと向かう。

堤防を歩いていると、
向こうから電動バッテリーカー、
いわゆるシニアカーに乗った
民宿のおばあちゃん、
いや、おかあさんと呼びたい感じの
ご婦人が迎えに来てくれているのが見えた。

む。むむむ。
お約束通り、そこやここやに猫がいる。
でもなんか思ってたのとちょっと違う。
長毛種が多いのだ。
モサモサが半分くらい。

猫に忍び寄ったり、かまったりして、
まっすぐ歩かず進むのが遅い子供たち。
それを待って、時々シニアカーを止めながら、
おかあさんが
民宿まで案内してくれた。


部屋に荷物を置いたところで、
とりあえずご相談。

明日は船が欠航するかも……
と、船会社の人が言っていたんですが。

「あらまあ」

出るとしても朝7時40分の便なので、
もし出たらそれで帰るつもりですが、
もしその船も出なかったら、
すみませんが
もう一泊泊めてくれませんか?

「明日、お客さん来るんだよねえ」

と予約状況に頭を巡らせるおかあさん。

でも、そのお客さんたちも船が出なかったら
島にはやって来れないので、
当然、部屋は空くことになる。
ので、大丈夫。
欠航の時には一泊の追加をOKしてもらう。
ああ、よかった。

ホッとしながら玄関を出ると、
さっそく猫が寄ってくる。
一匹、二匹、三匹四匹五匹六匹……

一番最初にやってきた
小さめのシマ猫が、
ごろんごろんとお腹を見せる。

妊娠してるじゃん。

耳の後ろを掻いてやると、
じゃれて甘噛みしてくる。

とりあえずこのシマ猫を
「おかあさん」と呼ぶことにする。


島散策へ。

仁斗田で一つだけある商店の前、
若いお兄さんがカップ麺の蕎麦を
階段状の地べたに座って食べている。
その周りに群がっている猫。
15匹くらい。

上り坂を登っていく。
また、猫の集合場所がある。
8匹ぐらい。
見ているとその中の一匹が寄ってくる。
すると、
もう一匹が近づいてくる。
すると、
また別の一匹も近づいてくる。

こういう猫のたまり場所が
この田代島にはいくつかあるのだが、
同じようなことがどこでも起きる。
好奇心が強いのか、
人間が好きなのか、
食べ物が欲しいのか、
とりあえず一匹が近寄ってくると
他の猫もなんとなく近づいてくる。

そして、
その場を去っていくと、
一匹か二匹がしばらく後をついてくる。
振り返ると、猫がいる。
だるまさんがころんだ、みたいな。

また、
ひとつのたまり場の猫たちは
なんとなく目つきが似ている。

シマ猫、ブチ猫、黒猫、茶色猫、灰色猫、
短毛なの、モサモサなの……
色や柄や毛の長さは違っても、
同じ一族な感じがする。
いろいろなパターンで血がつながっているのだろう。


上り坂をもっと登っていって、
大泊集落方面へ降りるちょっと手前、
田代島名所のひとつ、
『猫神社』にお参り。

ふと見ると、
ベンチの上で寝ている大きめの猫。
顔が丸く太ったシマ猫。
おっさんぽい。

横に座ってなでていたら、
母娘がやったきたので、
こんにちはーと挨拶したら、
その中学生くらいの娘が
感激丸出しの声で叫んだ。

「ネコ太郎!」

聞けば、
このおっさんぽい猫のネコ太郎、
けっこう有名な猫らしい。
ネコ太郎ブログもあるんですよと
お母さんのほうが教えてくれた。


民宿にいったん戻って、
道具を持って、釣りをするため堤防へ。

魚影が薄い。
というか、まるでいない感じ。
まあ、釣れなくてもいいやと
青イソメを針につけて糸を垂らす。

やっぱりアタリがないなあと思いながら
ふと横を見ると、
猫がいる。
遠めから近づいてる最中の猫も数匹。

仁斗田港周辺の一族には、
顔が丸く大きいタイプが多い。
脚が短めなのは、
仁斗田集落の猫全般の特徴。

魚、こないねえ、
まだ眠ってるのかなあ……
などと猫に話しかけたりしながら
数か所で糸を垂らしてみたが、
釣れる気配がない。
風が冷たくなってきたので竿をしまい、
民宿へ戻ると、また
「おかあさん」とその仲間が迎えてくれた。


夕飯まで少し時間があったので、
『マンガアイランド』という場所にも行ってみる。

ネコ型のロッジがいくつか建ったキャンプ地。
シーズンオフで今は閉まっているが、
猫は10匹くらいたまっている。

左目が病気で潰れかかったシマ猫と
右目がない茶色モサ猫が、
追いかけっこをしながら、
コンビで後ろをついてくる。

茶色モサのほうは妊娠しているのだが、
時折、すごい勢いでジャンプしたり
いきなり走り出したりするので、
いっしょに歩いているこっちが不安になる。
何の心配もいらないのだが。


アワビとナマコ。
大好物。
俺にとって最高のご馳走が入った夕飯をいただき、
風呂で温まってから、
布団に入る。

絵本の代わりに、
民宿に置いてある写真集を子供たちに読んでやる。
田代島の猫の写真集。

すると、
俺たちが「おかあさん」と呼んでいるシマ猫は、
この民宿のお父さんが飼っている
「ちゃめ子」という名の猫だとわかった。

小柄で、じゃれついてくるから
若い母猫かなあと思っていたら、
けっこうなベテラン母猫であることもわかった。

電気を消して、目をつぶる。

ヒュー、ぎしっ。

窓が揺れる音を聞いて、
風が強くなってきたなあと思いながら
眠りについた。


         --後編につづく
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