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ハジメちゃん [2011/07]

人間には、
自分が祝福されたい気持ちと
他人を祝福したい気持ちがあると思う。
sakurakouen.jpg
俺も含めて、大体の人は、
「祝福されたい」
という気持ちのほうが
「祝福したい」
という気持ちよりずっと強い。

ハジメちゃんは、
ずっと前から吉祥寺とか下北沢とか高円寺とかを
フラフラしていたオッサンで、
酔っ払うとダークモードに入ることも多くて、
話すのを嫌がる人、
煙たがる人も多かった。

なつかしの『吉祥寺バー』、
ほとんど金もないのに酒を飲みにやってきて、
人の話に割って入ってきて
迷惑がられることなんかはいつものことだった。

ただ、それは裏を返せば、
他人を祝福したいという気持ちが強い表れだと感じていた。

だから、
俺はハジメちゃんが好きだった。


うちの長男が生まれて一ヶ月、
初めて街に出た時に、
初めて会った“オトナ”はハジメちゃんだった。

今のヨドバシカメラの横、
赤ん坊を抱えている俺と妻を見て、
ビックリしたような、笑っているような顔をして、

一瞬、
赤ん坊に触ろうとして、
その手を、ピタッと止めて、

「おやかたー、赤ん坊はあんまり風に当てちゃ危ないぜー」

と、お得意の手のポーズを決めて笑っていた。


長男が2歳になった頃、
吉祥寺から中央線に乗ったら同じ車両にハジメちゃんがいて、
人見知りしない長男と二人で
横並びの三人席に座って、
ずっと楽しそうにしゃべっていた。

あの時、
ハジメちゃんは高円寺か新宿で降りるつもりだったのだ。

だが、ハジメちゃんは東京駅までやってきた。

何を話しているのかわからない2歳児と
意味もない会話をするために終点までつきあった末、
東京駅で降りた俺たち家族に手を振って、
そのまままた折り返しの電車に乗って去っていった。

「じゃあなーおやかたー、××××!」

いつもの声に出さない言葉を発して、
別れを告げていた。

そんなハジメちゃんに手を振りながら
うれしそうに笑っていた長男だが、
あの時のことはもう覚えていないだろう。

でも、俺はその時のことを一生忘れない。

そして、
ハジメちゃんの存在をすっかり忘れてしまった長男だけど、
その心の中には
ハジメちゃんの「人を祝福したい」気持ちは
今も息づいていると思う。

長男の影響を受けまくって育っている
次男の心の中にも、
ハジメちゃんの気持ちは生きていると思う。

グッバイ、ハジメちゃん。

じゃあねー。




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