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トヨタ・カローラアクシオ/フィールダー [2012/10]

トヨタのカローラにはアクシオとフィールダーという
ほぼ、おんなじクルマがある。
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アクシオは、普通のクルマ。
“セダン”というやつ。

フィールダーはこのアクシオの後部が
ほんのわずか長くなって、
荷物を多く積めるようになっている
“ステーションワゴン”というやつ。

レンタカー店で借りているので、
基本的にエンジンの大きさも変わらず、
たぶん、
足回りなんかにも違いはないと思うのだけれど、
運転しているとなんか違う。

何が違うかはよくわからないのだが、
確実に運転している気分が違うのだ。

なぜだ?


昔、大分の中津競馬場へ旅打ちに行った時、
競馬場の売店に

「だご汁あります」

と、紙が貼ってあった。

(だご汁?)

(だごの入った汁かい?)

(じゃ、だごってなんなんだい?)

とりあえず、お店のおばさんに訊いてみた。

だご汁ってなんですか?

「へ? だご汁は、だご汁だがね」

むー。

なれば食べてみるしかない。
300円くらいだったか、
注文してみると、
小麦粉を練ってびよーんとしているのが入った
具だくさんの味噌汁が出てきた。

あ、だご汁って、だんご汁のことなのか。

味噌味のスイトンだな、と思った。
びよーんと伸ばしたスイトン。


スイトンは子供の頃からよく食べてきたのだが、
正直、別に好きでもなんでもない食べ物。
べつに嫌いで食べないとかいうもんじゃないのだが、
食べて面白いもんじゃなかった。

中津競馬場でも、
残念な気持ちが押し寄せてきた。

“だご汁”というミステリーの結末が
その程度のモノとは……

だが、食べて、ビックリした。

これはたしかにスイトンだ。

なのに、スイトンじゃない。

食べていて何かが違う。
味も違うんだが、
もっと根本的に楽しさが違う。

どこかに初めて味わう面白さが隠されているのだ。


カボスだった。

一切れ、浮かべられているカボスが、
味噌味のスイトンを
胸をわくわくさせるような“だご汁”に変えているのだ。


カローラアクシオは、
素直に言っちゃえば、
本当につまらないクルマだ。

運転はしやすいし、
乗り始めればいつも乗ってるような感覚になるのだが、
面白みが全くない。

だからなんとなくだるくなる。

(もういいよ、この小麦粉のもそっとしたやつは)
という感じ。

その一方で
カローラフィールダーに乗ると
なぜかわくわくする。

キャンプ場へ向かっていることが多い、
というのもその一つの要因だとは思うのだが、
運転している気分が違う。

少し、後部が長く、
長方形に出っ張ってるだけなのだが、
ちょっとだけ運転してる感じが違っていて
なんだか気持ち浮かれてくる。

たぶん、
カボスが一切れ入っているのだろう。
クルマのどっか、目に見えない部分に。


中津競馬場のだご汁も
なかなか美味かったが、
大分市の『こつこつ庵』で食べるだご汁は
とんでもなく素晴らしく美味しかった。

びよーん、じゃなくて
びよびよびよびよよーーーーんと伸ばした“だご”が
柔らかい上にコシがあって、
いつまでも、どこまでも食べたい気分にさせる。

大げさに言ってしまえば、
伝説の名車、
トヨタ2000GTくらいの美味しさだと思う。

ま、乗ったことはないんだけど。


トヨタ2000GTとまで行かなくても、
アクシオ的な毎日を
せめてフィールダーくらいにはしたいなあと思いながら、
キョロキョロキョロキョロ
俺たちは生きているんだなーと思う。

どっかに
カボスが落ちてないかなーって。




フィアット・FIAT500 [2012/10]

おお、超ラッキー!
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というような記憶を思い出すことは、
カラダがくたびれた時、
心が疲れた時にとっても有効だと思う。

今まで生きてきて
いろんなラッキーをもらってきたが、
何度も何度も思い出している幸運といえば
小肌のことになる。

寿司の小肌。
大好物。

ただ、

うそっ! なにこれ、うめっ!!

みたいな小肌を食べられることは滅多にない。

なんだこりゃ……
と、落胆することや、

まあこんなもんかな……
と、自分で自分を納得させることのほうが圧倒的に多く、

食べた瞬間、
思わず笑顔になる小肌を食べたことは
実は3回しかない。

そのうち2回は同じ店なので、
2軒の店でしか
超ラッキーな思いをしたことがない、
ということになる。


フィアットのFIAT500というクルマがある。

500は「チンクエチェント」と読む。

イタリア車なのでイタリア語。

ルパン三世が
カリオストロの城とかに行く時に
次元大介といっしょに乗っていた車--

を、現代的に改良したクルマで、
カーシェアリングで借りられたので
何度か運転してみた。

小さくて、
可愛く光っていて、
走らせるといい塩梅にきりっとしていて、
なんだか職人芸を感じる……
まさに
“よく出来た小肌”のようなクルマなのだが、

同時にラッキーを運んでくれるクルマでもある。


白いチンクエチェントを運転して秩父に出かけた。

途中、長瀞のガソリンスタンドに寄ったら、
隣りでガソリンを入れていたおじさんが声をかけてきた。

「いいんだよね、この車。
 昔のデザインだった時、
 この車に乗ってたんだよ」

少し話をしてから、
おじさんがオススメしてくれた蕎麦屋に行って
蕎麦を食べた。

蕎麦も美味しかったが、
蕎麦屋のおばさんがおまけでくれた
採り立ての椎茸がまた美味かった。

あんまり美味しかったので
店頭で売っていたのを買って帰った。

チンクエチェントを返して、
自宅に戻ってから、
日本酒の美味しい店におすそわけで持っていった。

塩と酒を振られて焼かれた椎茸は
自分以外のお客さんにも配られ、
そのうちの一人が
びっくりするくらいの笑顔を弾けさせながら
椎茸を食べていた。

ケラケラと笑うと
えくぼが見えてくる可愛い女の人だった。

椎茸の話をしながら日本酒を飲んでいるうちに
話が弾んで、
いっしょにもう一軒行くことになった。

スケベ心を抱えながら、
とりあえず行きつけの店に連れて行った。

すると、そこで友人が飲んでいた。

しょうがない。
なんとなく友人を交えて飲んでいたら、
夜が更けてきた。

朝からクルマを運転して疲れていたせいか、
酒を飲みすぎたせいか、
つい、うとうとしてしまった。

気がつくと、彼女はもう帰っていた。

一か月くらい後、
駅前を歩いていたら
えくぼの女性が向こうから歩いてきた。

「おんや、偶然だねー。
 ヒマだったらどっか飲み行こうか」

と、誘おうと思ったら、
その後ろからさっきの友人がやってきた。

少し立ち話をしたのだが、
二人はどうやら結婚したいらしい。

しかも、女性のほうが積極的に。

「おしあわせに~」

二人を見送りながら、
白いチンクエチェントを思い出していた。


なーんて、実はこの話は
途中のどっかからか創作なのだが、
こんな物語が
フィアット500にはよく似合うと思う。

“幸運を呼ぶ”かもしれないクルマ、
チンクエチェントに乗って、
驚くほど美味しい小肌を探す旅に
いつか行きたいもんである。




日産・エクストレイル [2012/10]

北海道の食べ物、
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といえば何を頭に浮かべるだろうか?

とうもろこし、
毛蟹、
タラバガニ、
ホッケ、
ホッキ貝、
アスパラ、
ジンギスカン……

ま、なんでもだいたい美味しいのだが、
俺にとって北海道で一番好きな食べ物は
「サガリ」だ。


焼肉屋で食べるハラミの仲間、サガリ。

東京で食べるハラミより
ドガッとしていて、
肉肉しくて、
ムシャムシャモグモグ頬張る感じ。

ああ、肉だ肉だ。
そうつぶやきながら噛む。

日産のアウトドア車、エクストレイルには
この「サガリ」のイメージがある。


エクストレイルに乗って行ったのは東北だった。

ちょっくらデケーなあ、
だけども威張ってる感じはねえし、
ビシビシ荒野を走るっつーもんでもねえし、
もっと男っぺえクルマかと思ってたが、
走りはまんず安定してるし……

なんというか、
見かけよりハード指向じゃなくて
ざっくり優しいクルマだった。

快適すぎる高速を降りて、
水たまりがいっぱいある砂利道にも入ってみたが、
やっぱり優しい運転感。

「はいはい、お遊びはそのへんにして
 舗装された道路を普通に走って行きなさ~い。」

そうクルマに諭された気がした。


サガリを初めて食べたのは
北海道・浦河の焼肉屋。

だだっ広い店、若い夫婦が経営していたのだが、
奥さんが妊婦だった。

北海道でよく見かけるように、
ざっくばらんな笑顔で、
余計な御愛想は振り撒かずに、
ドンドンガガーっと
元気いっぱいでお客にサービスしてくれる。

ああ、この店も
やっぱり北海道らしく、
奥さんが仕切ってんだなーと思った。

帯広の老舗焼肉屋でも
老若さまざまな女性店員が
店内を走りながら
サガリを次々と持ってきてくれた。

静内の居酒屋も忘れられない。

でっかい女主人が、
客全員をまるで自分の家族のように扱いながら
大笑いで商売しているのだが……
その一方で、
ホントの家族であるご主人は
カウンターに小さく座って、
奥さんに対する愚痴とかをこぼしていた。


うむうむ。

俺にとって、
日産エクストレイルは、
「サガリ」そのものというよりも
「サガリ」のような
北海道の女の人たちに似ているのだ。

エクストレイルを運転していると、
クルマを走らせている、
というより
クルマという手のひらに乗せられてる感じがする。

可憐な女性をエスコートしている……
ってのとは真逆、
たくましい女性に背中を叩かれている!!
という感覚。

だから、エクストレイルは
黒でも青でもシルバーでもそれなりにカッコいいが、
やっぱり赤がいいと思う。

それは、
血が滴るサガリの色でもあり、
北海道女性たちの
寒風に晒された頬っぺたの色や
なぜだか赤すぎるクチビルの色と
重なるからなのかもしれない。






ミニ・ワン [2012/10]

大阪を西に行って、
淀川を渡ったところに十三という街がある。
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じゅうそう。

ここで買って食べたタコ焼きがうまかった。

うまかっただけでなく、
初めて「ポン酢しょうゆ」味のタコ焼きを
食べたのがこの街だった。

ポン酢味、最初、
んー、なんか変かなあ……
と感じていたが、
食べていくうちに好きになった。

もう一皿は普通のソース味を買っていたが、
どーせなら
もう一皿もポン酢しょうゆにすればよかった、
などと話した覚えがある。


ミニというおしゃれなクルマがある。

イギリスで作っているイギリス車だが、
親会社はドイツのBMW。

そのミニの中で、
有名なのが「ミニ・クーパー」。

「ミニ・ワン」はミニ・クーパーより価格が安く、
エンジンなんかもパワーが少ないらしい。

まあ、それでも外観はあまり変わらず、
カワイく、カッコよく、
スタイリッシュな気分で乗れるクルマ。

このクルマが、
十三のタコ焼きと似ている。


大阪・十三のタコ焼きと
イギリスおしゃれ車のミニを似ているなどと言うと、
ミニの輸入代理店の人に怒られそうだが、
オレにとっては共通点が多い。

小さすぎず大きすぎず
ピシッと決まったジャストなサイズ。

外側はカリッとしているが、
乗って運転してみると
内側はとろりとリラックス。

ポン酢しょうゆにダシしょうゆ、
そして、ネギやマヨネーズをトッピングするかごとく、
自由に楽しく選べるボディーカラー。

そして何より、
信号待ちから発進する時が似ている。


ミニ・ワンの出足は遅い。
強くアクセルを踏めば隣りのクルマについていけるのだが、
そうするとクルマの苦しさが
パワーの無さが浮き彫りになってしまう。

そんな野暮なところは見せられない。

で、思うのだ、
少しぐらい横のクルマより遅れたって
全然かまわないじゃないかって。

逆に、
横目でちらりと隣りに視線を送り、
余裕の表情を作り、
わざとゆっくり走らせているかのごとく振舞う。

「ふふん、
 どうぞお先に行ってらっしゃい~」

これがミニ・ワンを走らせている時、
信号待ちのたびに繰り返している顔つきなのだが……

タコ焼きを頬張った時に
ものすごく熱くて、
もう口から出してしまいたくなるけれど、
じっとガマン、
別に熱くなんかないよー、
と、誰が見てるわけでもないのに、
余裕のよっちゃん、
奇妙な微笑みを装って食べることがある。

えっ、ない?

オレにはよくある。
しょっちゅうある。

そして、軽く口笛を吹くような気持ちで、
次のタコ焼きを頬張っていくのだ。


田舎のワインディングロードを走らせていると
ものすごく気分がいいミニ・ワン。

乗っている自分の姿を楽しむクルマ。

もしも、
信号スタートの時に出遅れていて、
でも、
すました顔して運転している人を見たならば、

ああ、あの人は
口の中にタコ焼きを頬張っているのだな……
と、思って、
心の中で笑いながら抜いて行ってくださいませ。





マツダ・デミオ [2012/10]

妻がクルマの免許を取ったので、中古車を買った。
rakuda.jpg
というわけで、
免許を取ってから3年弱の
レンタカー&カーシェアリング生活に
ピリオドを打った。

レンタカーやカーシェアで
乗ったことのないクルマを借りて、
初めて運転する時は、
けっこうドキドキして、
なかなか楽しいものだったが、
まあしょうがない。

特徴を忘れないように、
乗ったクルマについて感想を書き残しておこうと思う。


その一。

近くのカーシェアにあったので、
一番数多く乗ったクルマ、デミオ。
マツダのコンパクトカー。

運転していて、
その感触というか、
走っているときの喜びが一番近い感じなのは、
10年位前、長崎で食べた一口餃子だと思う。

『雲龍亭』という店。

小さな店で、
カウンターがあって、
その内側で
職人さんたちが餃子を作っている。

一人が、
棒状にした皮の材料を飴くらいの大きさに切っては
めん棒で伸ばして皮を作っていく。
タンキュンタンキュンタンキュン。

隣りの一人が、
その皮に餡を入れては包んで餃子にしていく。
キュッピッキュッピッキュッピッ。

そんでもう一人が、
丸い餃子鍋に並べては焼いていく。
ジュッジョワージュッジョワージュッジョワー。

確か、そんな感じだった。

そのすばやくもリズム感あるプレーに
見とれているうちに、
小さな餃子10個くらいが皿に載って出てくる。

ビールを飲みながら
一口で餃子を食べていく。
グビッカプッジュワグビッカプッジュワ、
グビッカプッジュワグビッカプッジュワ。

一皿食べて、
二皿食べて、
でも、もう少し食べたくなる。

すげー美味しいとか
あんまりうまくねーなーとか思うよりも先に、
食べていて気持ちイイのだ。

それが、マツダ・デミオだった。

家族を乗せて運転して、
緊張したりして疲れて、
家に帰ってきて、
でも、もう少し乗りたいなと思うことがよくあった。

ハンドルを回し、
アクセルを踏み、
ブレーキを鳴らす。

いい感じのリズムが入ってきて、
クルマがだんだん自分の体とくっついていく感じ。

小さなクルマなので
長い距離を乗っていると疲れるとは思うけど、
いつか、
気楽に一人で鼻歌なんか歌いながら
長崎まで運転してみたいなと
ちょっと思う。

いつかね。







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